29-10 呼ぶ声

「おれの首、絞めようとしやがった」 ケイナは部屋に戻ってハルドの手にセレスを渡すと苦々し気に言い、再びコンピューターの前に座った。 セレスはケイナから離れるときに抗ったがハルドが腕を掴んだので諦めた。しかし大きな目を見開 …

29-9 呼ぶ声

 ケイナとユージーは地形図の出たモニターを必死になって睨みつけていた。 目が痛くなるような細かい数字がびっしりと点滅している。 そのふたりの後ろでハルドも目を細め、腕組みをして画面を見つめていた。 「北から順番にしらみつ …

29-8 呼ぶ声

 時間の制限もあるし、ふたりの緊張状態にも限界がある。 カインはできるだけ分かりやすくかいつまんで今までのことをふたりに説明してやった。 『ライン』から抜け出すことになった理由、ノマドに行くことになったいきさつ、プロジェ …

29-7 呼ぶ声

 エアバイクに乗るのは止めたほうがいいかな、とカインは軽い目眩を感じたときに思った。 メイドが食事を運んで来たがほとんど手をつけなかった。食べることなど頭から吹っ飛んでいたのだ。さすがにそれではまずいと思って出る前に補給 …

29-6 呼ぶ声

 ユージーは持っていた紙を一枚兵士に渡すと、ケイナの姿に気づいて顔を向けた。 「なんだ、もう、起きたのか? 二時間もたってないぞ」 ケイナは兵士が敬礼して去って行くのを見送ってユージーに目を向けた。 「何人連れて来たんだ …

29-5 呼ぶ声

「ケイナ」 耳もとで呼ばれた気がしてケイナははっとして目を開けた。 顔を巡らせると仮眠用のソファに横になっていたことを思い出した。 どのくらい眠ったのかと時間を確認するとまだ二時間もたっていなかった。 細切れに眠ってばか …

29-4 呼ぶ声

「ぼくんち、運送会社なんです」 運搬用のコンテナを操りながらジュディは言った。 「昔はそれなりの規模があったみたいだけど、今はもう全然。リィ・カンパニーに指名されてても、シェアは全体の5%にも満たない。ほとんどは儲けにも …

29-3 呼ぶ声

 リィ・カンパニーの巨大な塔の上層階にある自分の部屋に帰って来たのは数年ぶりのことだった。 定期的に地球に戻って来たときも、あえてこの部屋には帰らなかった。あまりに手が行き届き過ぎて自分の部屋という愛着すらわかない。カイ …

29-2 呼ぶ声

 機体がガクンと揺れたので、セレスはやっとそれで目を覚ました。 顔をあげるとすべての窓にはフィルターがおりていて、手元の光と計器類の明かりしかない状態だった。大気圏に入ったときに防護で前面ウィンドウは閉じられてしまったの …

29-1 呼ぶ声

 ケイナははっとして顔をあげた。眠ってしまっていたらしい。 あれからどれくらいの時間がたったのだろう…… 黒い機影と白い光を呆然として見上げているセレスの腕を必死になって掴んで立ち上がり、引きずるようにしてユージーの個人 …