27-8 ミント・キス
アシュアは落ち着かない様子で何度もテントから出たり入ったりを繰り返していた。 セレスがなかなか帰って来ない。 「うっとうしいなあ、もう。座れ!」 ケイナが吐き出すように言った。カインは仏頂面で黙っている。 ふたりともい …
アシュアは落ち着かない様子で何度もテントから出たり入ったりを繰り返していた。 セレスがなかなか帰って来ない。 「うっとうしいなあ、もう。座れ!」 ケイナが吐き出すように言った。カインは仏頂面で黙っている。 ふたりともい …
セレスはくしゃみをひとつして鼻をすすった。池の面は静かだ。鏡のようにしんと静まり返っている。 鼻をすすったのはくしゃみのせいだけではなさそうだった。気を許すと涙がこぼれそうだ。 カインとケイナがキスをしていたのがショッ …
「おまえ、この次離れたら、もう二度と会わないつもりじゃないのか」 それを聞いて思わず顔をそらせた。はっきりと分かっていたわけではなかった。 ただ、この次ケイナと別れるともう二度と会えないという予感はあった。 何があるのか …
『ああ、うっとうしい……!』 カインは頭を振った。 毎日データを睨みつけていると伸びた前髪が気になってしようがなかった。 後ろの髪はもう肩に届いている。アシュアのように結んでしまいたくてもふぞろいの髪はあちらこちらから飛 …
一週間後、ジュナは自らの足で直接森の入り口までやって来た。 今回もカインはアシュアとともに彼を出迎えた。 セレスの輸血が終わり、ケイナは昨日から少しずつ睡眠剤の投与を減らしている。 ピアスは以前のものではなくもっと抑制 …
「セレスはB型のお兄さんの子供ではないと言われたらしいけれど、問題はOとBしかいない中でのケイナのAB型が解せないんですよ」 「ルートにAかABの人間がひとりいる……?」 「ひとりかどうかは分からないけれど……」 カイン …
耳が完全に癒着するまでピアスをつけることができないという理由でケイナはテントから一歩も外に出ることを許されなかった。 もとよりリンクが薬を打ったのか、ケイナはずっとまどろんだ状態で起き上がることは不可能だった。 誰を見 …
明け方近く、毛布にくるまって眠り込んでいたカインはふと目を覚まし、目の前に差し出されたカップに気づいて顔をあげた。 「飲む?」 見上げるとアシュアが笑みを浮かべて立っていた。 昨日はあれから全員でケイナと同じテントにい …