08-6 見えない時間

 ケイナは自分が殴って傷つけた、切れたセレスの口元に触れたあと、ぐいっとセレスの顎を掴んだ。切れた口の端がぴりっと痛んだ。「おまえの目は不思議な色だな」ケイナは自分の顔をセレスに寄せた。セレスは思わず顔にかっと血が昇るの …

08-5 見えない時間

 外からの薄明かりの中で彼の横顔がくっきりと浮き出していた。「なんにも…… 感じないんだ」どこを見ているとも分からないケイナの視線をセレスは無言で見つめた。「なんにも感じない。なんとも思わない。冷たいんだよ。頭ン中が」 …

08-4 見えない時間

 その夜、ケイナはいつものように夜半過ぎに部屋に戻ってきた。トニとジュディはすっかり寝入っている。微かな気配と共に彼はいつもと同じようにシャワーのあとの濡れた髪をこすりながら自分のブースの中に入っていった。少しは気を使っ …

08-3 見えない時間

 セレスは午後のカリキュラムに何とか集中しようと頑張ってみたが、気を許すとすぐにユージー・カートの顔を思い出していた。おかげで教官には大目玉をくらった。明日も同じようにぼんやりしていると叱られるだけではすまないかもしれな …

08-2 見えない時間

 ケイナを中傷するような言葉をアルの口からあまり聞きたくなかった。確かにケイナは変わらなかった。ちらりと見る顔はいつも同じように無表情だ。それでも彼のことを冷たいのだとは思いたくなかった。どんなに無愛想でも彼だって人間だ …

08-1 見えない時間

「セレス、少しやせたんじゃない?」「ライン」に入って3ヶ月ほどたったある日、久しぶりにダイニングで会ったアルがセレスに言った。横にいたトニもセレスを見て頷く。同室のトニはともかく、アルと顔を合わせて会話するのは1ヶ月ぶり …