セイル-04
(4) 真由子はその後残った仕事を片付け、最後の日に新人たちを引き連れて送別会だと称してさっさと会社を去った。白帆には一言も声をかけなかった。 「一か月そこそこしかいないバイトの送別会って……」 後ろで悠木がぼそっと呟 …
(4) 真由子はその後残った仕事を片付け、最後の日に新人たちを引き連れて送別会だと称してさっさと会社を去った。白帆には一言も声をかけなかった。 「一か月そこそこしかいないバイトの送別会って……」 後ろで悠木がぼそっと呟 …
(3) 真由子が会社に入ってから一か月がたとうとしていた。 気が付けば彼女を中心によくあちこちで笑い声が聞こえた。 派手な身なりとハスキーボイス、ストレートな物言いと元接客業だけあって人当たりの良さはデスクワークの中の …
(2) 真由子は派手な見た目とは裏腹にとても真面目だった。 白帆が感心したのは、彼女はわからないことがあればはっきりと「わからない」と尋ねる部分だった。自分をかっこつけようとしない。そこが好ましかった。 だが、尋ねてく …
(1) 会社までは電車で30分。降りて徒歩で5分。 「おはようございます」 「おはようございます」 オフィスに入ると新入社員の赤城千佳が手にしていたごみ箱を床に置いて笑顔を見せた。 屈託のない幼顔。でも白帆(しほ)はちょ …