セイル-04

(4)  真由子はその後残った仕事を片付け、最後の日に新人たちを引き連れて送別会だと称してさっさと会社を去った。白帆には一言も声をかけなかった。 「一か月そこそこしかいないバイトの送別会って……」 後ろで悠木がぼそっと呟 …

セイル-03

(3)  真由子が会社に入ってから一か月がたとうとしていた。 気が付けば彼女を中心によくあちこちで笑い声が聞こえた。 派手な身なりとハスキーボイス、ストレートな物言いと元接客業だけあって人当たりの良さはデスクワークの中の …

セイル-02

(2)  真由子は派手な見た目とは裏腹にとても真面目だった。 白帆が感心したのは、彼女はわからないことがあればはっきりと「わからない」と尋ねる部分だった。自分をかっこつけようとしない。そこが好ましかった。 だが、尋ねてく …

セイル

(1) 会社までは電車で30分。降りて徒歩で5分。 「おはようございます」 「おはようございます」 オフィスに入ると新入社員の赤城千佳が手にしていたごみ箱を床に置いて笑顔を見せた。 屈託のない幼顔。でも白帆(しほ)はちょ …

18-05 水の青-エピローグ

 『ケイナ』はカートの家に引き取られた。 ユージーは養子にはしなかった。サナと結婚させたいという思惑があったのかもしれない。 だがその思惑は外れて、サナはカインの息子アキラと結婚した。サナは昔からアキラのことが好きだった …

18-04 水の青-エピローグ

「お願いがあるの」 ブランはちらりとダイを振り向いた。ダイはそれを見てうなずいてみせた。 「わたしたち、あと80年しないうちに全員いなくなるの」 カインは彼女の顔を無言で見つめた。 「この子を……」 ブランは『ケイナ』に …

18-03 水の青-エピローグ

 ダム湖が見えてきてカインはプラニカを砂浜に下ろした。ユージーのプラニカは既に着いていて、サナが砂浜に足跡をつけて遊んでいた。 ユイが彼女の姿を見つけて走り寄った。ふたりとも同じジュニア・スクールだったので仲がいい。サナ …

18-02 水の青-エピローグ

 20年の月日は瞬く間に過ぎた。 「寒いかしら」 窓の外から空を見上げながらティがつぶやいた。 3年前にドームの一部が解除されてから気温の変化が大きくなった。 「そろそろ行くよ」 カインが言ったので彼女は上着をとりあげた …

18-01 水の青-エピローグ

 『ノマド』の出生率は高いものではなかった。 80年で増えた人口は6000人ほどだっただろう。そのうち、5年以内に寿命が尽きる者は約3割。アライドには『A・Jオフィス』を中心にして、50名ほどの『ノマド』と『アライド』と …

17-09 最後の言葉

 湖岸の砂浜では全員が固唾を飲んでアシュアのバイクを見つめていた。 アシュアが体を後ろにねじってケイナを抱きかかえるようにしてバイクのハンドルを握っている姿を見て、やっと緊張が解けた。 ケイナが無事だった。 アシュアは静 …